更新日:2025年6月5日
これまで大学生年代(19歳以上23歳未満)の子を持つ親等(扶養する側)は、子(扶養される側)のアルバイト等による年収(給与収入のみ)が、
103万円以下であれば、親等の所得から扶養控除として63万円の控除を受けることが出来ました。
そのため、子は「年収103万円以下」になるよう、働く時間を調整することもあり、学生アルバイトを雇用する事業者は、
人材確保に苦慮することも多くありました。
そうした状況を税制面から改善するため、令和7年度税制改正において、
「特定扶養控除」の子の年収要件が引き上げられるとともに、新たに「特定親族特別控除」が創設されました!
大学生年代の子が収入を増やしても、親等の税負担が軽減されるような仕組みとなっています。
改正① 「特定扶養控除」の年収要件を引き上げ
親等が受ける「特定扶養控除」(控除額63万円)について、子の年収要件が103万円以下から123万円以下に引き上げられました。
改正② 「特定親族特別控除」の創設
「特定扶養控除」に加え、「特定親族特別控除」が創設され、大学生年代の子の年収が123万円を超えても、150万円以下であれば、
「特定扶養控除」と同額(63万円)の「特定親族特別控除」を親等が受けることができるようになりました。また、
子の年収が150万円を超えても、年収188万円以下までは段階的に61万円~3万円の所得控除を親等が受けることができます。
改正③ 学生自身の税負担も軽減
アルバイトによる給与収入がある学生は、これまで年収103万円を超えても、年収130万円以下であれば、「勤労学生控除」(27万円)を
受けることで、税負担はありませんでした。令和7年度税制改正において、勤労学生控除の所得要件が年収150万円以下に引き上げられました。
つまり、年収150万円までは、アルバイトをしている学生自身の所得税負担がなく、親の税負担もこれまでと変わらないということになります。
これらの改正は、令和7年分の所得税から適用されます。今回の改正により、アルバイトをしている学生等が、「年収103万円」を超えて、より多く働けるようになるため、
学生アルバイトを雇用する事業者は、より柔軟なシフトを組むことができるようになりそうです。
更新日:2025年5月22日
日々の業務の中で、処理の仕方を迷ったり、疑問を抱いたり、中には誤解していたりすることもあるかもしれません。
「適時・正確な記帳」のため、今回は「費用」についていま一度確認してみましょう。
費用計上のルールは「今期の費用は今期に、翌期の費用は翌期に」
費用計上には一定のルールがあります。そもそも「費用」とは、収益を得るために発生する支出のことを指します。
そのため、一定期間の収益とその費用は必ず対応させること、また、発生した期間に正しく割り当てられるように
処理することが求められます。(費用収益対応の原則)
加えて、いつ費用にできるかというタイミングには、税務においても一定のルールがあります。
これは、課税の公平性の観点から、「利益が出たから今期だけまとめて1年分支払う」といった利益操作のための支出や、
収益との対応期間のズレがないようにするためです。
税務上の費用は「損金」といい、売上を得るために直接要する費用(売上原価)は、売上に対応する部分だけ、つまり、
仕入の額から期末の棚卸高を除いた額が売上原価として計上できます。販売費や一般管理費、その他の費用については、
「当期中に債務が確定しているもの」が損金に計上できます。「当期中に債務が確定しているもの」とは下記の要件をすべて満たしているものをいいます。
「当期中に債務が確定しているもの」の要件
1.その費用に係る債務が成立していること(注文や申込等を行っていること)
2.具体的な給付をすべき原因事実が発生していること(役務の提供を受けていること)
3.金額が合理的に算定できること(請求書等で金額が分かること)
例えば、修繕費の場合、建物等の修繕を発注し、修理業者による修繕が完了し、かつその金額が客観的に確認でき得る状況にあれば、上記3つの要件を満たしているため、代金を支払っていなくても「未払金」等として計上することが可能です。
「費用」を認識するタイミング等で、誤りやすいケースを確認してみましょう。
ケース① 3月決算法人である当社は、4月に入社する新入社員向けの通信講座を3月に申込、支払も行った。その際、支払った全額を「教育費として」3月に処理している。
⇒ 3月中に「役務の提供」を受けていないので、当期中の費用とすることはできません。したがって当期は、「前払費用」等として処理する必要があります。
ケース② 3月決算法人である当社は、決算対策の一環として、3月に新しいタブレットPC(8万円)を10台購入し、「消耗品費」として処理した。
⇒ 取得価額10万円未満の資産の購入は、原則として、その取得価額の全額を「消耗品費」として費用計上することが可能です。ただし、そのタブレットPCを当期において「事業の用に供した」、つまり実際に業務に
使用していなければなりません。未使用の状態で、実際に業務に使用したのが4月以降の場合には、「貯蔵品」として翌期に繰り越す(当期の費用としない)ことが必要になります。
処理の仕方に迷ったり、判断が難しい取引があった場合は、お気軽に監査担当者までお問合せ下さい。
更新日:2025年5月8日
令和6年末から大きな話題となっている「年収103万円の壁」の見直し。3月12日時点では、123万円に引き上げられると
最新情報にてご紹介させて頂きましたが、令和7年度税制改正により、所得税が課税されない範囲が、「103万円」から
「160万円」へと見直されることになりました。(※本記事内での年収とは、給与所得者の年間給与収入のことをいいます。)
一定の要件のもと所得税の課税最低限が「年収103万円」から「年収160万円」に!
令和6年分まで、年収103万円以下の給与所得者は、所得税がかかりませんでした。この103万円の根拠は、
給与所得控除の最低保障額55万円と基礎控除額48万円の合計です。
本改正で、給与所得控除と基礎控除の金額が見直され、所得税の課税最低限が160万円まで引き上げられました。(※図表1)
57万円が一律で引き上げられたと思われがちですが、実は少し複雑です。
給与所得控除、基礎控除ともに、段階的に控除額が決められており、図表2及び図表3に則って、控除額が決まります。
まずは給与収入から図表2で該当する給与所得控除額を控除します。
給与所得控除後の金額について図表3の合計所得金額欄に該当する基礎控除額を控除することになるため、
160万円の控除を受けることが出来るのは、年収200万円相当以下の人ということになります。
また、基礎控除については令和7年・8年と令和9年以降でも控除額が異なっているため、
給与計算事務が複雑になるという影響が考えられます。
TKCの給与計算システムを利用することで、複雑な年末調整事務、源泉徴収事務を効率化・省力化することができます。
この機会に給与計算システムの導入を検討される際は、担当者までお気軽にお問合せ下さい!
TKC給与計算システムについては下記のページより詳細をご確認下さい。
更新日:2025年4月10日
子育て世帯の経済的負担を軽減し、安心して子育てができる環境を整えることを目的として、令和7年度税制改正において、
子育て世帯等を対象とした税制改正がありました。その中から今回は、2つの改正をご紹介させて頂きます。
①子育て世帯等に対する「住宅ローン控除の拡充」の延長
住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高の「0.7%」を、新築住宅は13年、中古住宅は10年にわたり所得税から控除できる制度です。
令和7年度税制改正において、令和6年限りとされていた子育て世帯等に対する住宅ローン控除の借入限度額の上乗せ措置および、
床面積要件の緩和措置が、令和7年に限り引き続き適用できるようになりました。
対象となる子育て世帯等とは、19歳未満の子を有する夫婦いずれかが40歳未満の夫婦のことをいいます。
対象となる方が、新築・買取再販(不動産業者が中古住宅を買い取り、リフォームやリノベーションを施した上で再販売したもの)で、
「長期優良住宅・低炭素住宅」、「ZEH水準省エネ住宅」、「省エネ基準適合住宅」を購入する場合、
住宅ローン控除の借入限度額が、500万円もしくは1,000万円上乗せされます。
また、新築住宅の床面積要件が「50㎡以上」から、「40㎡以上」に緩和されています。
ただし、床面積要件の緩和措置を適用する場合、合計所得金額が1,000万円以下で、
新築住宅の建築確認が令和7年12月31日以前に行われていることという要件があるためご注意下さい。
②子育て世帯に対する「生命保険料控除の拡充」
令和8年分の措置として、子育て世帯(年齢23歳未満の扶養親族がいる世帯)を対象に、所得税の生命保険料控除において、以下の見直しが行われます。
・新生命保険料に係る一般生命保険料の控除額の計算方法を見直し
・旧生命保険料および上記新生命保険料を支払った場合の一般生命保険料控除の適用限度額を最高6万円に引き上げ(現行:最高4万円)
なお、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の各控除の合計適用限度額(12万円)については変更ありません。
その他にも、子育て世帯等に対する「住宅リフォーム税制の拡充」の延長などが令和7年度に限り、引き続き適用可能となっておりますので、
ご自身が対象になるかどうか分からない、対象だけど申告書の作成方法が分からないといった方がいれば、お気軽にご相談下さい。
更新日:2025年3月28日
将来の老後資金を自身で積み立てて育てる年金制度、個人確定拠出年金「iDeCo」(イデコ)。
令和7年度税制改正において見直されたポイントを解説します。
そもそも「iDeCo」ってなに?
iDeCoとは、国民年金や厚生年金等の公的年金に上乗せする年金制度の1つです。
加入は任意で、自身で設定した掛金を拠出し、金融商品で運用。運用益を含めて積み立てた年金資産は、
原則60歳から受け取ることができます。
※iDeCoを取り扱う金融機関を通して加入します。
※平成14年1月から制度運用がスタートし、令和6年12月現在で約354万1,000人が加入しています。
iDeCoは
①拠出した掛金の全額が所得控除の対象となります。
②運用益も非課税で再投資が出来ます。(通常、金融商品を運用すると運用益に税金がかかります)
③受取時にも控除が設けられています。(公的年金等控除、退職所得控除)
令和7年度税制改正において、iDeCoへの拠出限度額が引き上げられました。
第1号被保険者(自営業者やフリーランスの方):旧拠出限度額(国民年金基金等と合算)6万8,000円 ⇒ 新拠出限度額(国民年金基金等と合算)7万5,000円
第2号被保険者(企業年金加入の会社員等):旧拠出限度額2万円(企業年金と合算で5万5,000円) ⇒ 新拠出限度額(企業年金と合算)6万2,000円
第3号被保険者(企業年金なしの会社員等):旧拠出限度額2万3,000円 ⇒ 新拠出限度額6万2,000円
働き方やライフコースが多様化する中、老後に向けた資産形成をより一層促進する制度となっております、
拠出額が毎年の年末調整や確定申告において所得控除の対象となるのも大きなメリットですね。
ご興味のある方は是非、お近くの金融機関までお問合せ下さい。
更新日:2025年3月12日
令和7年度税制改正において、基礎控除・給与所得控除がそれぞれ10万円引き上げられました。
令和6年までは、給与所得者は年収が103万円以下であれば、所得税がかかりませんでした。
「103万円」とは、基礎控除48万円と、給与所得控除の最低保障額55万円を合わせた合計の金額です。
このことから、「103万円」という金額が1つの区切りのように強調され、その結果、この金額を目安として
就業調整をする人も少なくありませんでした。
令和7年度税制改正により、基礎控除が58万円に、給与所得控除が65万円(最低保障額)に引き上げられます。
これにより、一部の人を除き所得税の減税となります。特に、これまで「103万円以内」を意識して
就業調整をしていた人は、所得税の非課税の範囲が123万円まで拡大することで、働き方が変化することになります。
※給与所得控除の見直しは主に給与所得者を対象としていますが、基礎控除の引き上げは、合計所得金額2,350万円以下の
個人事業主にも適用されます。
この見直しに伴い、扶養控除の合計所得金額要件も見直されることになります。
「103万円の壁」の見直しは、令和7年分の所得税から実施されますが、令和7年分については年末調整での対応となり、
令和8年分以降については、改正後の「源泉徴収税額表」を適用することになります。
給与計算システムの活用等、柔軟な対応ができるように準備をしておきましょう。
更新日:2025年1月21日
商品、製品、仕掛品、原材料等の棚卸資産は、会社の資金が形を変えた大切な財産。知らぬ間の消失や陳腐化、
破損は財産の損失であり、経営に大きな影響を及ぼします。そのため、定期的な実地棚卸による在庫管理は必須。
「棚卸」の重要性をあらためて考えてみましょう。
会社が保有する棚卸資産を数えて正確な数量や品質を確認する「棚卸」は次のような観点で正しく行うことが求められます。
●正確な決算書の作成 ⇒ 「費用収益対応の原則」に従って、来期以降の売上に対応する商品や製品は期末在庫となり、
当期の売上原価にはなりません。これにより、正しい当期の利益が決算書に表示されます。
●適切な在庫管理 ⇒ 実地棚卸は、過剰在庫や不足在庫、商品の破損、紛失を発見する絶好の機会です。
発注量の調整や不良在庫の処分等、適切な在庫管理のために必要な情報を得られます。
●適正な税務申告 ⇒ 在庫の計上漏れは所得の過少申告になります。下記のような「社外在庫」は注意が必要です。
決算時に正しく期末在庫を把握するための5つのポイント
①在庫の実際の数量と帳簿上の数量は一致していますか? ⇒ 一致しない場合は、入出庫時の記入ミスはないか等、原因を確かめる必要があります。
②社外の倉庫や取引先に自社の材料や製品を預けていませんか? ⇒ 社外在庫については保管先から「保管証明書」等を発行してもらいましょう。
③すでに仕入計上されているもので、まだ自社に届いていない商品はありませんか? ⇒ 未着商品は、所有権が移転した時点で、棚卸資産として計上します。
④決算日時点で得意先に未着または未検収の製品等はありませんか? ⇒ 売上計上の基準を納品や検収基準としている場合、発送した製品等が、決算日時点で
取引先に未着または未検収であれば、棚卸資産として計上します。
⑤決算日間際の仕入や売上はありませんか? ⇒ 決算日間際に仕入れた商品について、その商品がまだ売上となっていない場合は、期末在庫となり棚卸資産に計上する必要があります。
月末、期末に慌てないためにも、日ごろから、入出庫管理の徹底、定期的な実地棚卸、倉庫内の清掃及び整理整頓を心がけていきましょう!